先月末から今月初めにかけて、藤子作品の単行本が3冊刊行された。せっかくのいいタイミングなので、それぞれの作品およびその周辺について、簡単な感想を書いておく。
・ぴっかぴかコミックス「ドラえもん」第14巻(小学館)
いつの間にか、ぴかコミ「ドラえもん」も14巻目となった。もちろん、ぴかコミ刊行作品の中では最多の巻数だ。最近のぴかコミは、一月あたりの刊行点数が減り、藤子作品の刊行ペースも落ちた。このような状態では、いつまでぴかコミが続くのか、最近は少し不安だ。どのくらい売れているのだろう。
昨年の「モッコロくん」だけに終わらせず、「パジャママン」「四じげんぼうピーポコ」など、幼年向けの未単行本化作品を、ぜひもっと出して欲しいものだ。
さて、14巻の単行本初収録作品は「ゲラメソプンピストル」「ねがい七夕ロケット」「タイム手ぶくろとメガネ」の3本。他は全て、てんコミに入っている作品だ。
このように、ぴかコミで未収録作品が発掘される事は嬉しいのだが、正直なところ、巻を重ねるにつれて、てんコミ収録作品と比べて完成度が落ちる話が多くなっているように思う。
例えば、14巻では「ゲラメソプンピストル」は、途中からなぜかのび太の射撃の腕が鈍るのが気になるし、「タイム手ぶくろとメガネ」は同系統エピソードの「タイムふしあな」と比べるとオチにひねりが無い。見所は、中学生のエリさま登場くらいか。「ねがい七夕ロケット」も、オチが付いていない気がするが、「うらたなばたロケット」の使い方が面白くて、個人的には好きな作品だ。
まあ、ぴかコミや「ドラえもん カラー作品集」「ドラえもん プラス」で、これまで埋もれていた作品の多くが単行本化されたので、今なお未収録の作品が「残りもの」であるのは、ある程度は仕方がないのだろう。
しかし、気になるとは言っても、これらの作品は「ドラえもん」として一定の水準は、クリアしていると思う。
今後も未収録を発掘して欲しい気持ちはあるが、他の話とネタが被っていたり、代筆が混じっていたりするような作品までは、あえて入れる必要は無いとも思っている。あくまで、単行本として残っていく事を前提にした編集を、お願いしたい。
ともかく、ぴっかぴかコミックスは、未読のF作品を読める可能性の高いシリーズなので、今後にも期待している。
・「ミス・ドラキュラ」第4巻(ブッキング)
今回の4巻で、以前に奇想天外社から出ていた単行本の復刻分は終了。第5巻からは、単行本未収録部分に突入するが、元から以前の単行本を持っていない私にとっては、あまり関係ない。初読のA作品として、どの巻も楽しんで読んでいる。
3巻あたりから徐々に虎木さんの出番が減って、佐木やフーコ主体の話が増えてきたが、4巻ではその傾向が、さらに顕著に現れてきている。かと言って、主人公が登場しないから物足りないと言うこともなく、どのキャラが主役を務めていても、一つの作品世界として読めてしまう。このような話作りは、長期連載でキャラが確立してきたからこそ、出来たのだろう。
これはこれで面白いのだが、初期に出てきたフランケンなどは一体どうしているのか、ちょっと気になる。5巻以降、虎木さんのプライベートを描いた話はあるのだろうか。
ところで、4巻までの収録分で、一部の話は線が粗く、おそらくそれらは印刷物から復刻を行ったと思われる。と、言うことは、いくらかは原稿が紛失してしまっているのだろう。初単行本化となる5巻以降では、原稿の現存率はどんなものだろうか。「ミス・ドラキュラ」の復刻自体が有り難いことには違いないが、なるべく綺麗な状態で読みたいので、どうしても気になってしまう。
・ビッグコミックススペシャル「愛…しりそめし頃に…」第8巻(小学館)
これまでは、トキワ荘での時間がゆったりと流れていた印象があったが、本巻ではテラさんの引っ越しや「シルバー・クロス」連載開始など、いよいよ動き出した感じがした。また、「まんが道」以来、満賀の伯父・鍋河大策が久々に本編に登場した。まさかこの人が今頃出て来るとは思わなかったので、連載時には驚いたものだ。鍋河大策のエピソードは、これまで何度と無く繰り返し描かれてきた満賀の新聞社時代への未練に、ある程度決着を付ける意味があったのではないだろうか。
それにしても、あらためて単行本でじっくりと読むと、シルバー・クロスが漫画「シルバー・クロス」を描いている図は、何とも言えない奇妙な面白さがある。この「シルバー・クロス」も、作中では「満才茂道」作品となっているが、昔から「藤子不二雄作品」として認識していただけに、これまでに登場した初期作品とは違って、かなり違和感がある。
さて、はたして、今後本作は一体どこまで描かれるのか。最後は、満賀と才野がトキワ荘を出るところで終わるのだろうが、気になるのは、そこに至るまでのエピソードだ。個人的には、「少年サンデー」創刊と「海の王子」の連載開始あたりまでではないかと思っている。少年漫画界に変革を起こした週刊少年誌の登場は、ゆったりと描かれてきた作品の終わりを飾るエピソードとして、ちょうどいいのではないだろうか。
と、勝手に想像してみたが、果たしてどうなるだろう。トキワ荘にいながらスタジオ・ゼロ設立まで話が続いたら、それはそれで面白いかも知れないが、流石に無理を感じるだろうなあ。