年が明けてしまったが、全集感想はまだ11月発売分。すっかり、一ヶ月遅れ状態が定着しつつある。1月中には何とか最新の刊行分まで追いつきたいものだ。
・『ドラえもん』第11巻
ほぼ前巻と同じ事の繰り返しになってしまうが、この巻は「はなバルーン」が収録されていることが、個人的には最大の見どころだ。しかも、帯には「はなバルーン」の扉絵が使われている。誰が帯の絵柄を決めているのかは知らないが、その人にありがとうと言わせていただく。よく、「はなバルーン」を選んでくださいました。欲を言えば、着彩した上でカバーイラストに使われれば最高だったのだが、さすがにそこまでは望みすぎか。今回のカバーイラストに使われた「バタバタフライ」(カラーコミックスでは「ちょうちょ」)も好きな話なので、これはこれで嬉しい。
本巻は、単行本初収録作品に「これなら今まで未収録だったのも仕方がない」と思ってしまう作品がいくつかあったので、それらを紹介しておこう。
まずは「さかさカメラ」。扉絵以外はすべてアシスタントの代筆による作品だ。これをA5サイズで読まされるのは、かなりきつい。こんな有様でも全集に収録された以上、後半が代筆になっている「サカユメンでいい夢見よう」などと同じく、ネームまではF先生が担当したと言うことなのだろう。実際、初出掲載時の作者名は「藤子不二雄」であり、アシスタントの名前は一切出ていない。ちなみに、案から完全に代筆の場合は「原作:藤子不二雄、絵:○○」と言った感じに連名になっていた。そう言った作品は、今のところこの全集には収録されていないようだ。
そして「ゲラメソプンピストル」では、射撃の名手だったはずののび太が弾を外しまくっている。のび太の数少ない特技を否定しているだけに、未収録もやむなしだろう。もっとも、最初のページではちゃんと的に弾を当てているのが謎と言えば謎だが。
それにしても、毎度のことだが全集の『ドラえもん』は分厚すぎて困る。今回など、同時刊行の残り2冊を重ねて『ドラ』とほぼ同じ厚さになるほどなので、余計にそう感じてしまう。もう少したつと病気休載のある年度も含まれるようになるので、発表年を考えると14巻あたりからは幾分は薄くなるのだろう。
・『ミラ・クル・1』
『ミラ・クル・1』『宙ポコ』『宙犬トッピ』の3作を収録。いずれも、藤子不二雄ランド後期に初単行本化されている。私自身、F先生の新作に飢えていた時期にFFランドで初めて読んだ、懐かしい作品群だ。これらの作品や『バウバウ大臣』などは、小学館の雑誌に連載されたにもかかわらず、てんとう虫コミックスでは出ていなかったものなので、初単行本化したFFランドの功績は大きい。
収録作品のうち、『ミラ・クル・1』と『宙ポコ』は残念ながら未完で終わっているが、『宙ポコ』は主人公・宙ポコのおこりっぽい性格がほかのFキャラにはない味を出して面白くなりそうだっただけに、たった3回での終了はもったいない。しかも最後は「パーマンごっこ」と言うショボい終わり方になってしまったのはちょっと悲しいところだ。
『ミラ・クル・1』は、あらためて読み返すと『パジャママン』のリメイクなのだと言うことがよく分かる。こちらもまだまだ話が拡がりそうだっただけに、中断はもったいない。ある意味、大長編ドラの犠牲になった作品だ。
本巻の収録作品では唯一、『宙犬トッピ』はきちんとした最終回が描かれている。そのせいもあってか、この3作の中では『宙犬トッピ』が一番好きだ。話は『キテレツ大百科』的だが、中学生の工作(コー作の名前もここからか?)で宇宙の技術による道具を作るいうのは、ちょうど自分が中学生の時に読んだだけに、身近に感じられてうらやましくもあった。
そう言えば、ヒロインの「みどり」が第1話だけ「カスミ」と呼ばれているミスがFFランドではあったが、今回はきちんと「みどり」に直されている。1話の時点ではまだ設定が固まっていなかったのだろうかと、今さらながらあらためて気になってしまった。
最後に、カラーページの扱いについても触れておこう。扉絵のカラーは冒頭の口絵で全てフォローされており、これは素晴らしいことなのだが、『ミラ・クル・1』の本編カラー部分が白黒になってしまったのはもったいない。ここまできたら、カラー完全再現を目指してもよかったのではないか。
・『Uボー』
「毎日こどもしんぶん」連載のため、変形サイズの作品。そのため、横に長いレイアウトになっている。これを読んで、この全集がA5サイズでよかったと思った。もし、もっと小さい判型で出ていたら、一コマ一コマが小さくなりすぎて、読みづらくなっていただろう。
この作品、オールカラーで見た目も綺麗なのだが、中身は読んでいて微妙な気分になる。はっきり言ってしまうと、内容的は2ページ版『ドラえもん』だ。道具のアイディアのみが『ドラえもん』と同じものから、ストーリーもほぼそのままのものまでその度合いは様々だが、強く既読感をおぼえるエピソードが大部分を占めている。一体どうしてこういう事になったのか、編集者や当時の読者はネタの使い回しに突っ込みを入れなかったのか、色々と気になってしまう。単純に、読者が限られているこども向けの新聞だからと割り切って描かれたものなのかもしれない。
連載初期の5話目までは、UボーがオバQ的な性格で起こす騒動が描かれており、こちらの路線で続いていたら、また違った面白さの作品になっていたのではないだろうか。もっとも、その路線で良い案が浮かばなかったから、ドラ路線に方向転換したのかも知れないが。
ところで、最終話は『ウメ星デンカ』のしのだひでお版最終話「別れはつらいよ」に通じるところがあるが、と言うことは「別れはつらいよ」もF先生のネームを元にしのだ氏が描いた作品なのだろうか。それが判明するのは、全集版『ウメ星デンカ』の発売を待たねばならない。多分第3期には刊行されるのだろうが、それでも今年の秋以降か。『ウメ星デンカ』の連載末期には、「別れはつらいよ」以外にも代筆作品がいくつかあるので、それらの扱いも気になるところだ。