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「映画ドラえもん のび太の 絵世界物語」感想

 今年も、映画ドラえもんの新作が公開になった。
 私は、昨日名古屋で観てきたので、例年通りにこのブログで感想を書いておく。当然だが、内容に思いっきり触れて語るので、特に未見の方はご注意されたい



 今年は、監督に寺本幸代氏・脚本に伊藤公志氏というコンビで作られたが、このお二人の過去の実績からして、かなり期待していた。
 伊藤氏は映画の脚本は初参加だが、テレビシリーズの『ドラえもん』で多くの脚本を担当していて、原作のアレンジもアニメオリジナルエピソードもいい感じだったので、はたして長編の映画ではどんな話を作るのだろうと楽しみにしていた。
 寺本監督については、「新・鉄人兵団」「ひみつ道具博物館」など、すでに名作と言われるドラえもん映画を複数作品監督した実績があり、今回は12年ぶりの映画ドラえもんへの登板と言うことで、かなり期待していた。
 実際に観てみると、このような期待が裏切られることはなく、非常に楽しめる作品となっていた。これまでのドラえもん映画と比べて順位を付けるのは難しいが、わさドラになってからのオリジナル作品としては、トップクラスの出来だと思う。

 ここからは、順を追って感想を書いていこう。まず、オープニングに「夢をかなえてドラえもん」が復活したことからして、うれしい。
 しかも、最近テレビでよく使われる1分10秒版ではなく、1番がフルに流れる1分30秒版が採用されていたのもよかった。1分10秒版は一部の歌詞が飛ばされてしまうので、聴いていて物足りなさがあるのだ。
 歌に付くアニメーションも数々の名画を題材としたパロディで、色々な絵にドラえもんたちが入りこむものなので、何度も観たい気分にさせられた。

 本作は、「のび太の絵世界物語」というタイトルだが、舞台の大半は「絵世界を通じてつながっている13世紀のアートリア公国」なので、内容は微妙にタイトルからずれている感はある。
 それはそうだとしても、アートリアで繰り広げられたドラえもんたちの冒険が非常に楽しくて、終盤の大きな山場の前にもいくつか小さな山が設けられており、観ていて飽きない作りだと感じた。
 子どもはつまらない映画だと観ていて飽きてしまいがちであるが、色々と細かいギャグを入れて画面に惹きつけようとする工夫は大変多くなされていた。

 本作で特に上手いと思ったのは、ひみつ道具の使い方だ。さすがに「ひみつ道具博物館」の寺本監督が作っただけのことはあるが、それよりも脚本の伊藤氏のこだわりによるところが大きいのではないかと睨んでいる。
 X(旧Twitter)の伊藤氏のポストからもうかがえるが、この方はそもそもかなりの藤子・F・不二雄先生のファンだと思われる。だから当然、原作の読み込みは半端ではないだろう。そのような方が脚本を書いたということもあって、「この道具をここに持ってくるか」と唸らされるような使い方になっている。
 たとえば、偽者のクレアが登場するが、この偽クレアに化けているのはコピーロボット…と思ったら、まさかの「ヒトマネロボット」だ。考えてみると、コピーロボットはコピーしたい本人が鼻のボタンを押す必要があるので、本作の展開ではヒトマネロボットが使われるべきだ。こういうところのこだわりが、素晴らしい。
 本作では「はいりこみライト」だけは映画オリジナルの道具ではあるが、この道具も効果的に使われていた。
 この道具の効果から、クライマックスの「へたっぴドラえもん」登場につなげるところは、「なるほど、そうきたか」という感じだった。ドラえもんを失ってかなり絶望的な状況となっていただけに、大きなカタルシスを味合わせて貰った。
 道具の使い方と言えば、昨年の「のび太の地球交響楽」のネムケスイトールに引き続いて、それほど有名ではない道具を説明なしに使う場面があって、おっと思わされた。それは「タイム手ぶくろとめがね」を使う場面だ。
 このような描写は、観客にある程度のひみつ道具の知識を要求することになるが、いちいち道具について説明していたら冗長になりかねないところもあり、さじ加減が難しいところだろう。個人的にはこういう描き方は嫌いではない。

 このように、ドラえもん映画としてかなり満足できた本作ではあるが、気になった点も少しはあった。
 最もひっかかってしまったのは、舞台が13世紀のヨーロッパとされており、しかも「数百年のうちに火山の噴火で亡びる運命」となっていることだ。13世紀から数百年と言うことは、17~18世紀くらいまでは存在していたわけで、そんな国が全く歴史から姿を消すことがあり得るのだろうかと思ってしまった。
 もうひとつ、ゲストキャラクター・パルの声の演技が、かなり気になった。と言うか、あれは声の演技としてはダメだろう。棒読みのうえに、声質がガラガラしていて聞き取りにくいので、決定的に声の演技には向いていない。
 パル役以外の専業ではないゲスト声優陣がちゃんと演技ができていただけに、余計にパルの酷さが目立つ格好になってしまっていた。誰が配役を決めたのかは知らないが、「大人の事情」があるにしても、根本的なところでもうちょっと考えてほしかった。
 声優と言えば、チャイ役の久野美咲さんは、5月から藤子・F・不二雄ミュージアムのFシアターで公開される『チンプイ』の新作アニメでチンプイ役を務めるのだった。同じ小動物系のキャラと言うことで、今回のチャイの声を聞いてチンプイも楽しみになった。

 と、言った感じで、今回はかなり満足することができた。万人に勧められる作品と言っていいと思う。
 来年の映画は「海」を舞台にした作品と言うことで、とうとう「のび太の海底鬼岩城」が来そうだが、はたしてどうなることやら。原作が名作なだけに、映画でのアレンジがどうなるかがちょっと怖い。



(3/12追記)

 本日、2回目の鑑賞に行ってきたので、思ったことを追記しておく。

 この作品、全体的にコミカルな感じの演出が多くなされているが、設定として舞台となったアートリア公国は、13世紀から数百年後に火山の噴火で亡びてしまうことになっている。歴史を変えるわけにはいかないからだろうが、ドラえもんたちもこの滅びの運命については特になにも手助けなどはしない。
 それを頭に入れた上で観ると、何とも言えないもの悲しさが感じられた。こういった舞台設定は、映画ドラえもんでも珍しい。

 今回の悪役、ソドロは「なにもないところで転ぶ」というクセを持っていたが、意外にも「ころばし屋」の攻撃は上手く避けていた。どういう意図があっての設定なのだろう。「転びやすいやつは、逆に転ばせにくい」というネタなのだろうか。

 パルは、アジトの家でコーヒーを入れてくつろごうとしているところなどを見ると、本当にソドロの言うように「おぼっちゃん」なんだろうなと思わされる。なかなかに愛すべきキャラクターだなと思った。これで、声の演技さえちゃんとしていたらなあ。

 と、いったところか。まだまだ、機会があれば観ておきたい作品だ。今回もスタッフのこだわりが、随所に見て取れた。